2014年3月23日日曜日

インフルエンザワクチンは個人戦よりも団体戦が得意?

更別(と近隣町村の)インフルエンザ流行も一段落.
今年は複数のウイルスが流行し,更別では2月上旬と3月上旬,2回の流行のピークがありました.

・お子さんの多い家庭ではほぼ1か月,インフルエンザが家庭で蔓延しっぱなし.
・ご夫婦で勤めに出ていらっしゃるご家庭では2度も比較的長期の有給休暇を取得しなくてはならない.
・3月中旬になり学級閉鎖に追い込まれるクラスもあったり,学校現場は授業の管理に一苦労…

などなど,インフルエンザは個人に重大な結果をもたらしうる疾患としての側面と社会生活に重大な影響を与えうる疾患としての側面を持ち合わせています.
あと,私たち医療者が疲弊する,という一面も…(笑)
何とかインフルエンザにかかることなく,また,大流行を起こさずにシーズンを乗り切りたいものです.

インフルエンザの予防といえば予防接種(ワクチン)です.
ところが,

「接種したのにかかっちゃった.」

という方,いらっしゃったのではないでしょうか?

ワクチンの効果は完璧ではありませんので残念ながらある程度そういう方たちはいるのが現実です.「かかったときに治療すればいい」「ワクチンを打ってもかかってしまうなら打たない」などという言葉をいただくこともあります.

 しかし,それはワクチンに効果がないということとは違います.インフルエンザワクチンは10%の流行を5%くらいに抑える効果があることが分かっています(参考文献: 【家庭医が教える病気の話】(35)ワクチンはみんなで受ける[名郷直樹著]).
 更別であれば340人の流行を170人に抑えることができる.170人がインフルエンザにかかることを避けられる,という訳です.

ワクチンの効果を正確にお伝えするなら
個人のレベルではワクチンを接種しても「かかるかも知れないし」「かからないで済むかも知れない」としか言えない.でも例えば「学校のクラスみんなで受けたらインフルエンザにかかる人は出るかも知れないけど,学級閉鎖になるほどたくさんの人がかかるようなことはないかもしれなくて,かからない側の人になる可能性は高くなる.」とは言えます.

たとえて言うなら,インフルエンザワクチンは個人戦よりも団体戦の方が得意なのです.

野球やサッカーなどのチームスポーツではスーパースター的に上手な選手が1人だけいてもなかなか勝てないチームをよくみますよね.逆にそのような選手がいなくてもみんながしっかりトレーニングしチームプレイに徹すると結構強い.
インフルエンザに負けないようにするには,皆さんにチームプレイの意識,公共や社会への貢献という意識が少しだけ必要であるとも言えます.

更別村診療所では65歳以上のご高齢の方と12歳以下のお子さんには格安でワクチンを提供しているのはそんな理由からなのです.
とにかくたくさんの人に接種して頂きたい.
今シーズン,更別村民で接種頂けたのは1000人弱.

保育園,幼稚園,学校現場では先生,児童/生徒さんたちの接種率はまだまだ高いとは言えません

共働きの世帯が多い昨今,インフルエンザワクチンにお子さんを連れてくるために仕事を休むのが難しいという面もあるかも知れませんが,流行期に突如有休を取ったり,さらには学級閉鎖になってしまったりすることと比較するといかがでしょうか?
昔のように学校現場に私たちが予防接種にお伺いすることができれば接種率も格段に上がるのでしょうが,簡単には実現できないのが実情です.

来シーズンの住民の皆さんのチームプレイに期待します!

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